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    COLUMN

トランスミッションの役割

2022-02-14
前回の続き
こんにちは。

早速ですが皆さま、頭の中にエンジン自動車を想像してみてください。



では質問です。


「 車はエンジンだけで走れるでしょうか。 」

この聞き方をしてしまうと、答えは1つしかないような気もしますが……。


皆さんのご想像通り、答えはNoです。車はエンジンだけで走ることができません。
それでは一体何が必要なのでしょうか。




車が走るために欠かせないものの1つが、エンジンの出力を引き出し、車輪に動力を伝えるための「トランスミッション」です。トランスミッションはエンジンの後ろに搭載されていることが多いです。
エンジンが生み出す動力は、車輪に伝達される前にトランスミッションを経由します。
様々なシチュエーションに合わせて、速度とトルクを適切に伝達するのがトランスミッションの主な役割です。
ちなみにトルクとは、エンジンのシャフトを回す力の強さを指します。

車は、一般道路を60km/hで走ることもあれば、高速道路で100km/hで走ることも、急な坂を上ったり下りたりすることもありますよね。しかしエンジンの出力には限度があります。

坂道を上り下りする際にはトルク(回す力)を強くする必要がありますし、高速で走る際にはスピードを出すため、回転数を増やす必要があります。

エンジンからのトルクや回転数、スピードの配分を、ギアの組み合わせによって最適な物に変化させているトランスミッション、それではその仕組みを見てみましょう。


車用トランスミッション
バイク用トランスミッション
トランスミッションの構造

バイク用トランスミッションの方がギヤが見やすいのでこちらで説明をしていきます。


あまり見慣れない部品かもしれませんが、このように、隣り合うギヤはシャフトに固定、空転、固定…と交互に並んでいます。

噛み合うギヤを見てみると、固定されているギヤと対になるのは、空転するギヤです。
これはギヤが六速になっても同様です。


ギアAとギアBが噛み合っているからといって、メインシャフトが動くとカウンタシャフトも動くというわけではありません。


ニュートラル時、ギアB(メインシャフト側一速ギア)はメインシャフトに固定されており、同じ速度でシャフトと一緒に回転しています。

ギヤA(カウンタシャフト側一速ギア)は、回転はしているのですが、シャフトは一緒に回転していません。つまり空転状態です。



したがって、ギアB(とメインシャフト)がどれだけ回転してもカウンタシャフトに動力が伝わる事はありません。カウンタシャフトは車輪側に連動しておりますので、ギヤAが空転しているうちは、車輪に動力が伝わっていないということになります。



では車輪に動力を伝達するにはどうすればいいでしょうか。




もうお気付きですね。 

カウンタシャフトがギヤAと連動して動く様にする必要があります。


カウンタシャフトとギアAが連動するには「スリーブ」と「シンクロナイザーリング」という部品が必要です。

上の図だと、三速と四速、三速と五速の間にわずかに見えるのがそれです。
     シンクロメッシュ機構
常時噛み合い式マニュアルトランスミッションの構造を示す模式図(車)
2速における駆動力の伝達経路(破線部)(車)
「シンクロナイザー」はクラッチの1種で、異なる回転数で回転している物同士を、摩擦の力でシンクロナイズ(一体化)させる部品です。

この場合、スリーブがギヤA側に移動し、スリーブとギヤが完全に噛むと、空転から固定状態になるので、ギヤAの回転がカウンタシャフトへと伝達するという流れです。


つまり、ギヤBが回転した際、ギヤAと噛んだカウンタシャフトも回転するので、車は前に進むという仕組みです。




ちなみに・・・


「シンクロナイザーリング」は、銅合金でできています。
したがってミッションオイルに求められる性能の1つは、腐食防止です。

ギヤ油は耐荷重性能が求められるため、極圧剤を含有させます。その極圧剤に含まれる活性の高い硫黄が腐食を引き起こします。

以上の理由により、ミッションオイルを更油される場合には、腐食防止性能があるギア油を推奨します。


ギヤの大きさ
先程の図では、一速から五速までを示していますが、それぞれ噛み合っているギヤの大きさが違うのがお分かりでしょうか。

大きなギヤで小さなギヤを回すとき、回転数が増えますのでスピードが出ます。

逆に小さなギヤで大きなギヤを回すと、トルクが大きくなりますので、パワーが要る坂道を上るのに適しています。


ギヤを変えると、車輪に伝わる動力が変わるので、スピードが変わるというわけです。

 

最初の問いに戻ると

車を走らせるには、動力源である「エンジン」のほか、動力の伝達経路でもある「トランスミッション」が必要、ということになります。


トランスミッションは、実物を見たことがあるという方は殆どいらっしゃらないのではないでしょうか。

少々仕組みが複雑で、この説明では分かりにくい部分もあったかもしれませんが、参考にしていただければうれしいです。




それではまた次回の更新をお楽しみに。



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